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第8回 【調達】
iStock_000005218304XSmall.jpg生産システムにおける調達部門のスタッフの業務は【お客様にとっての価値を作り上げるために良質の原材料を安く購入する】ことと思います。そのために相対的により有利な市場を探すこと、調達先と上手に商談を展開することがスタッフの役割であると考えられがちではないでしょうか。つまり、購入単価の見積りを行う場合、「数社の見積りの相対比較による単価の設定(相見積り方式)」「ターゲットコストにするための指値による単価の設定(指値方式)」で行われているということが多いということです。
しかし、本来、調達部門の捉える調達品のコストの判断基準は、”調達先・外注先でこれだけのコストがあればできるはずだ”というものでしょう。筆者の経験的には、あまり調達先で発生するコストとの関連性について考えられている企業は少ないと感じています。購入単価において、調達先の材料費・加工費・運賃はこれだけあればできるはずという価格の積算を行って(調達先の利益を含む)、見積りの比較を行うべきです。科学的・定量的に付加価値を開発することが出来、もっと大きな付加価値を引き出せる可能性があるからです。この判断基準を購入コスト基準と言います。
【見積りを取る】ということは、見積りを購入コスト基準と比較しながら、貴社の持っている技術水準、管理水準の考え方を調達先に伝え、調達先の能力開発を行うために取るということです。そして、【商談】はそのための共通理解を得る場の設定であり、それは、仕入先との協創の関係を築く場となるのです。貴社の購入コスト基準に対し調達先の見積りが高く、差異が発生している場合、その原因を具体的に指摘し、仕入先の管理水準向上、付加価値開発力向上に役立たせる、つまり差異は調達先の努力目標となります。
購買コスト基準は調達先のレベルアップだけでなく、次のようなことにも大いに役立ちます。
◎より有利な価格の仕入先選定に必要な基準の把握
◎購入単価の査定評価及び価格折衝を有利にするための資料
◎社内の原型開発や企画段階での検討資料 (各部門への正しいコスト情報への提供)
しかし、実際に購入コスト基準を設定するということは現実問題として、非常に困難なテーマの1つです。正確なコストの見積りを実行する体制が出来上がらないのです。その理由の1つは調達のスタッフが技術的な知識やコストの正しい概念や管理技術があまり身に付いていないことが上げられます。技術修得の機会の少ないのでしょう。もう1つは調達スタッフがコスト以外の調達業務に忙殺されていることで、1件当りの見積り書のチェック、コストの検討にはほとんど手間を掛けていないことが考えられます。
ただ、どんな企業であっても、生産システムにおける調達の『質』が問われる時代です。1歩ずつでもステップアップを図っていくべきです。体制が出来上がっている企業は経営環境の変化に対し、強いコスト体質を築き、目標とする収益力を保持しています。
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